【王寺町指定文化財】D51形蒸気機関車895号機

更新日:2024年05月22日

舟戸児童公園に静態保存しているD51形蒸気機関車895号機を令和6年(2024)3月18日付けで王寺町指定文化財に指定しました。

名称・員数 D51形蒸気機関車895号機・1両
附 D51895ナンバープレート・4枚
種別 有形文化財(歴史資料)
年代 昭和19年(西暦1944年)
製作 日立製作所
寸法・重量

長さ19.5m、幅2.936m、高さ3.98m

動輪直径1.4m

重量125t

品質・形状 1D1形テンダ式
所在地 奈良県北葛城郡王寺町舟戸一丁目3937-1
保管施設

舟戸児童公園(ナンバープレートは王寺町地域交流センターにて展示)

所有者 西日本旅客鉄道株式会社
管理者 王寺町

 

公式側前方から

 D51形蒸気機関車895号機は、D51形として895番目に製造されたもので、舟戸児童公園に静態保存されています。日立製作所が昭和19年(1944)5月10日に製造しました。
 D51形蒸気機関車は、D50形に続く大型貨物機関車として昭和11年(1936)に開発され、その後約10年間で蒸気機関車の各形式のなかで最も多い1,115両が製造されました。軸配置は1D1形と呼ばれるもので、石炭庫と水槽を備えた炭水車を後ろにつなぐテンダ式です。
 蒸気機関車は、火室で石炭を燃やして燃焼ガスを起こし、罐(ボイラー)内の水を熱して蒸気を発生させ、蒸気圧によるピストンの往復を動輪の回転に変えて走行します。発生させた蒸気は、動輪回転の他にも炭水車から罐内へ給水するポンプ、罐内に入れる水の温度をあらかじめ上げる給水温め器、前照灯や運転席の室内灯などに供給する発電機、ブレーキ作動や動輪の空転を防ぐ砂まきなどに用いる空気圧縮機、客車の暖房など幅広く利用されます。

運転席内

 昭和47年(1972)11月7日に廃車となった895号機は、翌48年からこれまで半世紀にわたって保存されてきました。給水温め器、給油装置などの機械類をはじめ、動輪やメインロッド(主連棒)、ブレーキなどの走行装置や炭水車に外観上の目立った破損・欠損は認められませんが、前照灯・標識灯のカバーガラスやタブレットキャッチャーなど小型部品がやや多く欠損します。運転席内は、速度計・圧力計・罐内水面計のカバーガラス、窓、腰掛などに破損・欠損が認められる一方で、蒸気分配箱の各バルブ(弁)、加減弁テコハンドル、逆転機ハンドル、砂まき作用コックなどは今も動かすことができ、良好な状態といえます。

非公式側リターンクランクの刻銘「D51895」

 また、公式側シリンダの蒸気室空気弁などに「D51895」、公式側・非公式側サイドロッド(連結棒)などの各部品に長野工場(長野県)を示す「NN」や鷹取工場(兵庫県)を示す「TT」、後藤工場(鳥取県)を示す「GT」といった刻銘が認められ、部品のナンバリングや車両整備の履歴がうかがえます。
 895号機は製造後、柳井機関区(山口県)、岩国機関区(山口県)、広島第二機関区(広島県)、津和野機関区(島根県)、鳥取機関区(鳥取県)、福知山機関区(京都府)と転属し、昭和46年(1971)4月5日から廃車までの1年7か月は奈良運転所に配置されました。

集煙装置と蓋開閉シリンダ

 895号機の特徴といえるのが、罐上の集煙装置と重油併燃装置です。集煙装置は昭和29年(1954)に、重油併燃装置は同31年(1956)に、ともに後藤工場で取り付けられました。集煙装置は、トンネル内で煙が運転席に入り込まないよう後方に排出させるもので、通常は同装置の蓋を開けて煙を上方に排出しますが、トンネルに入る際に空気シリンダで蓋を閉めて後方に誘導します。重油併燃装置は、走力を高めるのに火室内に重油を噴射し、効率よく燃焼させて蒸気圧を安定して上げます。ともに後付けされたものなので、集煙装置は従来の煙突に箱を被せるように設置し、蓋の開閉シリンダは、本来は砂箱の管理に使用する踏み板の上に設置しています。重油併燃装置では、焚口戸に穴を開けてバーナーを入れ、噴射させるのに用いる蒸気は蒸気分配箱の側面に新たにバルブを取り付け、重油タンクは、罐上の蒸気溜を覆うドームカバーとボイラー安全弁の間に置きました。

昭和46年(1971)9月26日、SLブーム全盛のイベント列車JC赤とんぼ号として、三重連の先頭に立って王寺駅を走るD51形895号機

 奈良運転所配属中に走っていた関西本線には、山線と呼ばれる難所の加太越えがあり、集煙装置と重油併燃装置が役立ちました。これらの装備があることで、機関士らが煙で一酸化炭素中毒になる恐れや、カマ(ボイラー)の調子を最大限に整えなければならない機関助士の心身負担が軽減されたのです。集煙装置や重油併燃装置は、静態保存される際に取り外されることが多いなか、895号機には関西本線を走行したときのまま良好に保存されています。
 ナンバープレートのオリジナルは、王寺町役場の金庫内で保管されてきたこともあって、前後左右の4枚とも良好に残っています。赤く塗られているのは、奈良運転所に配置されていたためです。
 D51形蒸気機関車895号機は、実際に王寺駅を含む関西本線を走行した車両で、関西本線を走行するのに役立った装備を残したまま保存される貴重な文化財です。895号機をつうじて、王寺町が王寺駅の開業を契機に、「鉄道のまち」として大きく発展したこと、明治時代から続いた蒸気機関車の鉄道文化があったことを永く伝えたいと思います。

文化財は大切にしましょう

・運転席以外のところに入ったり、登ったりしないでください。

・柵を越えて、中に入ってはいけません。

この記事に関するお問い合わせ先

地域交流課 文化資源活用係

〒636-0013
奈良県北葛城郡王寺町元町1-9-28
電話番号:0745-72-6565